Prinergy では、PDF/X-1a:2001 ファイルおよび PDF/X-3:2003 ファイルを生成できます。この機能にはライセンスが必要です。
PDF/X は、ページ作成者と印刷会社間でページを交換するための形式です。PDF/X は完全な PDF 仕様のサブセットです。
PDF/X ファイルの共通特性により、スムーズなファイル交換が可能になります。PDF/X を使用することで、ファイルのパフォーマンスに関する向上は見込めませんが、PDF/X ファイルには不明なフォント、画像、印刷に適さないカラー スペースなどのプリプレスに一般的な問題はありません。
PDF/X への出力
PDF/X に出力する場合、単に PDF/X に出力するだけでなく、初めに PDF/X へのリファインを行う必要があります。Prinergy では、リファイン段階で多数の PDF/X の問題点が検出され、これらの問題が対処されます。出力に PDF/X を選択すると、選択されたマスタ ファイルが PDF/X に準拠しているかどうかチェックされます。ただし、フォントの埋め込み、画像の置換、カラー変換などの問題には、出力時には対処できず、Prinergy でファイルの処理エラーが発生します。
PDF/X の特徴
PDF/X-1 ファミリー:
PDF/X-1:1999 - ANSI(米国規格協会)により PDF/X-1 として 1999 年 10 月に承認されました。この形式は、PDF 1.2 に Adobe Tech Note 5188 を加えたものを基礎にしています。
PDF/X-1:2001 - ISO(国際標準化機構)により 2001 年 4 月に承認されました。この形式は PDF 1.3 を基礎にしています。これは改定が加えられた国際バージョンです。
PDF/X-1a:2001 - ISO により 2001 年 4 月に承認されました。この形式は PDF 1.3 を基礎にしています。埋め込みファイルは使用できません。これは Prinergy でリファイン可能なバージョンです。
PDF/X-1a:2003 - 未承認ですが、承認手続きが進行中です。この形式は PDF 1.4 を基礎にしていますが、透明機能や JBIG2 圧縮などのバージョン 1.4 の機能は許可されない予定です。
PDF/X-2 - 未承認です。すべてのフォントを埋め込む必要があります。PDF/X-2 では OPI を使用せず、GUID(Global Unique ID)を使用して外部ファイルを参照します。外部ファイルは PDF/X-1 または PDF/X-3 形式のファイルである必要があります。
PDF/X-3:2002 - ISO により 2002 年に承認されました。この形式は PDF 1.3 を基礎にしています。PDF/X-1 カラー スペースに加え、L*a*b カラー スペースおよび RGB カラー スペースが許可されます。
PDF/X-3:2003 - 未承認ですが、承認手続きが進行中です。この形式は PDF 1.4 を基礎にしていますが、透明機能や JBIG2 圧縮などのバージョン 1.4 の機能は許可されません。
PDF/X-1a:2001 および PDF/X-3:2003 の技術要件
- フォントを埋め込む必要があります。
- OPI を使用する場合は、ファイルの画像を高解像度画像に置き換え、OPI コメントを削除する必要があります。
- 転送機能(TR および TR2)は使用できません。ページにカスタム転送機能が含まれていると、Prinergy で処理エラーが発生します。
- あらかじめ分版されたページは使用できません。ページ全体がコピードット DCS の入力ファイルでは、Prinergy はファイルを再コンポジット化します。これにより、PDF/X-1a:2001 に準拠したページが使用できます。
- スポット カラーおよび CMYK を使用できます。RGB および L*a*b は使用できません。
- LZW および JBIG2 圧縮は使用できません。
- バウンディング ボックスは制限されます。各ページには、トリミング ボックスまたはアート ボックスのいずれか(ただし両方ではない)を含むメディア ボックスが必要です。ページには、裁ち幅ボックスまたはクロップ ボックスを使用できます。トリミング ボックスまたはアート ボックスは、全体が裁ち幅ボックスまたはクロップ ボックス内にある必要があります。
- ハーフトーンについて:
- ハーフトーンに名前を付けることはできません。つまり、Prinergy では、ハーフトーン名に依存してスクリーニングの選択をしているため、DotShop スクリーニングは使用できません。PDF/X-1a:2001 にリファインする場合、Prinergy ではハーフトーン名キーを含むハーフトーン辞書が削除されます。これには、DotShop ハーフトーン辞書も含まれます。
- ハーフトーン フェーズ(HTP キー)はありません。
- ハーフトーン タイプは 1 または 5 のみです(しきい値スクリーニングなし)。
- PostScript の断片の埋め込み、および PDF 1.3 より上位の PDF 機能はサポートされません。このため、透明機能は使用できません。Prinergy では、PDF 1.4 入力ファイルの透過オブジェクトはフラット化されます。
- 注釈の使用は限られています。注釈全体が裁ち幅ボックスの外側にある場合、または裁ち幅ボックスがない場合はアート ボックスまたはトリミング ボックスの外側にある場合に、注釈を使用できます。ただし TrapNet 注釈は例外で、制限はありません。
注意:Prinergy では、トラッピングに TrapNet 注釈を使用しません。
Prinergy で PDF/X にリファインする場合は、可能な限り上記の項目すべてを検出して対処します。PDF/X 準拠ファイルの作成が可能ではない場合、ファイルにエラーが発生します。
リファイン時の処理
PDF/X にリファインする際には、リファイン プロセス テンプレートの[ノーマライズ]、[オプティマイズ]、および[カラー変換]オプションを選択する必要があります。
Prinergy では、ノーマライズ プロセス中に OPI 置換が行われ、フォントが埋め込まれます。[画像検索パスで高解像度画像を検索]オプションは有効になっています(無効にすることもできます)。[フォントが不明な場合にエラー]オプションはオンで、これをオフにすることはできません。
カラー変換では、入力カラー スペースが CMYK とスポット カラーに変換されます。
注意:L*a*b* PANTONE カラー ライブラリがインストールされている場合は、[スポット カラーの処理]セクションの[カラー レシピのソース]領域で[カラー データベースでレシピを検索]オプションをオンにすると、ファイルを処理できない場合があります。このオプションがオフで、L*a*b* を使用してカラー レシピが定義されている場合も、ファイルを処理できない場合があります。L*a*b カラー スペースは、PDF/X-1a:2001 および PDF/X-3:2003 ファイルに使用することはできません。
残りの PDF/X 準拠項目はオプティマイズ中にチェックされます。PDF/X 準拠ファイルの作成が可能ではない場合、ファイルにエラーが発生します。
Prinergy での出力時に PDF/X-1a:2001 を選択した場合に実行される内容
編集により PDF/X-1a:2001 以外のエレメントや機能が追加されている場合に備えて、選択したマスタ ファイルが PDF/X-1a:2001 に準拠しているかどうかチェックされます。この時点でいくつかの問題が修正されます。ただし、フォントの埋め込み、画像の置換、カラー変換などの問題は、この時点では対処できず、Prinergy でのファイル処理エラーの原因になります。ファイルは、PDF/X-1a:2001 に再度リファインする必要があります。
複数のページを選択して、出力時に[PDF ファイルの発行]ダイアログ ボックスで[ページを個別のファイルに保存]を選択すると、選択したファイルが結合されて単一の PDF/X-1a:2001 ファイルになります。
推奨ワークフロー
PDF/X にリファインする作業は重要です。それにより、出力および印刷会社への送信に使用するのと同じ PDF/X ファイルをベースとするプルーフ サイクルが行われることになるためです。
- 入力ファイルを次にリファインします。PDF/X-1a: 2001
- リファイン(OPI、フォントの埋め込み、カラー マッチング)
- PDF/X-1a: 2001 デジタル マスタ ファイルが出力されます。マスタ ファイルでは、以下の作業を行うことができます。
- Acrobat View に表示したり、入力形式で PDF/X に対応するプリンタに出力します。または、
- PDF/X-1a にエクスポートし、ファイルをサードパーティ製プリンタに送信します。
ファイルを通常どおり PDF にリファインし、ベクター JTP 出力で PDF/X-1a:2001 に出力する方法
この出力方法は一部の状況で選択可能ですが、一般にお勧めできる処理ではありません。特に、リファイン時にカラー マッチングを実行する必要があります。カラー マッチングを必要とするファイルを PDF/X-1a:2001 にリファインしていない場合は、出力時に PDF/X-1a:2001 に変換されません。リファイン時に対処されるその他の問題として、フォントの埋め込みと OPI があります。
ベクター出力(PDF の発行またはベクター JTP 出力)時に実行される内容
Prinergy での出力に PDF/X を選択すると、選択されたマスタ ファイルが PDF/X に準拠しているかどうかチェックされます。これは、マスタ ファイルが編集され、PDF/X ではないエレメントや設定がファイルに追加された場合に備えるための処理です。この時点で修正される問題もありますが、一部の問題(フォントの埋め込み、画像の置換、およびカラー変換など)はここでは解決されず、Prinergy でファイルの処理エラーが発生します。ファイルは、PDF/X に再度リファインする必要があります。
OPI 置換の必要性
PDF/X-1a:2001 では、ファイルに OPI コンポーネントが含まれていないことが必須条件です。OPI が置換済みで、PDF/X ファイルの受信者がファイルを処理する際に他の外部リソース(フォントまたは画像)を必要としないことが求められています。
Prinergy では、デフォルトで PDF/X-1a:2001 へのリファイン中に OPI が置換されます。一部の状況では高解像度画像がドキュメントに埋め込まれますが、ファイルには OPI コメントが含まれたままです。このような例は、QuarkXPress で高解像度 TIFF ファイルを配置し、FAT ファイルとして出力する場合です。このようなケースでは、Prinergy で OPI 置換が試行されるので、警告またはエラーが発生します。
OPI を使用しないワークフローでは、リファイン プロセスで[画像検索パスで高解像度画像を検索]チェックボックスと[画像が不明な場合にエラー]チェックボックスの両方をオフにします。
PDF/X-1a:2001 ファイルのリファイン
はい。Prinergy は、PDF/X-1a:2001 を他の PDF 入力ファイルと同等に扱います。PDF/X-1a:2001 ファイルを通常の PDF ファイルにリファインすることも、再度 PDF/X-1a:2001 ファイルにリファインすることもできます。通常の PDF ファイルにリファインすると、そのファイルは PDF/X-1a:2001 識別キーを持たなくなります。PDF/X-1a:2001 にリファインすると、Prinergy はその他の入力ファイルを PDF/X-1a:2001 にリファインした場合と同様にそのファイルをチェックします。
PDF/X チェッカーについて
コダックでは、次の PDF/X チェッカーのテストを実施しました。
- Apago PDF/X-1 Checkup バージョン 2.5
- DDAP PDF/X Verifier バージョン 2.0
- Callas pdfInspektor2 バージョン 1.0
- Enfocus PitStop バージョン 5.02(次のプロファイルを使用:PDF/X-1a:2001 v2)
当社のテストでは、コダックの PDF/X-1a 出力は Apago チェッカーと DDAP チェッカーで常に合格しました。
pdfInspektor2 および PitStop では、ファイルが PDF/X-1a:2001 に準拠していても、次の状況でエラーが通知されることが判明しています。
- Callas pdfInspektor では、PDF/X-1a:2001 で要求されるすべての情報が存在する場合でも、常に「OutputIntent Info missing」(OutpuIntet 情報がありません)と報告されます。
- Callas pdfInspektor では、PDF/X-1a:2001 の仕様では正常である場合でも、BX および EX 演算子はエラーとして報告されます。BX および EX 内であっても、PDF 1.3 以外の演算子は禁止されているためです。
- Enfocus PitStop では、「Document does not use modern compression mechanisms」(ドキュメントで最新の圧縮メカニズムが使用されていません)と報告されます。このメッセージは、PitStop で圧縮が最適かどうかのチェックによって生成されます。PDF/X-1a:2001 とは関係ありません。このチェックを除外すると、エラーが報告されなくなります。
- Enfocus PitStop では、ハーフトーン(HT)キーが存在する場合に必ず「Custom halftone function found」(カスタム ハーフトーン機能が見つかりました)と報告されます。ただし、ハーフトーン タイプが 1 または 5 の場合、PDF/X-1a:2001 ではハーフトーン キーの使用が許可されています。
Prinergy での PDF/X-1a:2001 の実装に関する現在の問題点
[トラップされている]が True に設定されている PDF/X ページを Prinergy に入力して、[トラップ]セクションが有効のプロセス テンプレートでリファインすると、Prinergy はそのページの再トラップを試行します。
PDF/X-1a:2001 出力ファイルを作成する際、PDF/X-1a:2001 ファイルの[トラップされている]キーは常に False に設定されます。これは、すべてのトラッピングが処理済みかどうかの自動的な判断が困難なためです。
入力ファイルが PDF 1.4 ファイルの場合は、マスタ ファイルに PDF 1.4 バージョン タグが含まれます。また、メタデータ キーが含まれる場合もあります。(PDF 1.4 の透明オブジェクトはフラット化されます。)ベクター PDF 出力または PDF の発行を使用する出力では、ファイルは適切な PDF 1.3 バージョン キーを持ち、メタデータ キーは含まれていません。
入力ファイルが PDF ファイルで、タイトル キーまたは作成キーが設定されていない場合は、マスタ ファイルでも同様に、これらのキーは設定されません。出力では、作成キーは設定されますが、タイトル キーは設定されません。
Prinergy で PDF/X 機能を使用しない場合
デジタル マスタ ファイルとして PDF/X 形式を使用しない場合は、PDF/X-1a:2001 でなく PDF を生成するようにプロセス テンプレートを設定します。Prinergy は、通常の方法でデジタル マスタ ファイルを作成します。これにより、PDF/X では使用できない Prinergy の機能を使用できます。
PDF/X-3 について
PDF/X-3 ファイルには、ターゲット デバイスを指定する出力インテントやカラー プロファイルを含めることができます。
PDF/X-3 入力ファイルに出力インテントが含まれる場合、システムは警告を発生し、履歴ログに出力インテントの値を記録します。これは自動で実行されます。この機能を有効にする必要はありません。
入力ファイルが PDF/X-3 の場合は、PDF/X-3 出力インテントで指定されたカラー プロファイルを使用できます。リファイン プロセス テンプレートの[カラー変換]セクションで、[PDF/X-3 に埋め込まれた出力インテントを[最終出力プロセス プロファイル]として使用]をオンにします。
出力ファイルが PDF/X-3 の場合は、出力プロセス テンプレートの[ファイル形式]セクションにある[出力インテント]領域で、ICC プロファイルや PDF/X-3 出力インテントのプリント コンディションを名前で指定できます。
ワークフローが PDF/X-3 準拠であるかどうか、およびカラーの精度を確認する場合は、Altona Test Suite をリファインして出力します。Altona Test Suite 1.2 の使用およびAltona Test Suite 2.0 の使い方を参照してください。
PDF/X-4 について
Prinergy 8.4 は、Preflight+ 経由で PDF/X-4 入力ファイルを確認するために使用できます。
PDF/X の詳細情報
- http://www.iso.org/:PDF/X-1a:2001 と PDF/X-3:2003 の間の技術要件の相違点に関する ISO-15930 の説明。
- http://www.npes.org/programs/standardsworkroom/cgatstechnicalstandards.aspx:仕様を策定しているグループ CGATS(Committee for Graphic Arts Technologies Standards)へのリンク
- http://direct2.timeinc.com:ファイルの送信に関する Time Inc. の推奨事項